ごあいさつと個人事業開業時の手続について

はじめまして。中央区日本橋兜町にあるフラウズ会計事務所・税理士の
平林慎(ひらばやしまこと)です。

こちらのブログでは、会計・税務に関する事はもちろん、税理士業務を通じて
感じたことやそれ以外に趣味的な事も綴りたいと考えています。

私は令和3年に開業しておりますので、令和4年2月から受付が始まる確定申告に
税理士として得た収入を決算して申告を行うことになります。

近年は働き方改革の一環で副業が認められ、事業を開始する方や
コロナ禍のご時世に一念発起して開業される方も多いかと思います。

そこで初回は多くの開業された方のサポートを行ってきた私の視点から
個人事業主として開業した場合の必要な手続きややるべき事を
お伝えできればと思います。

1.税務署への手続き

まずは個人事業主として開業される場合には必ず税務署へ
必要書類の手続きを行ってください。届出する書類は次のとおりです。

・個人事業の開業・廃業等届出書

・青色申告承認申請書

・給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書

・青色事業専従者給与に関する届出手続

・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請

個人事業の開業・廃業等届出書は必ず提出が必要となり、
提出期限は事業の開始等の事実があった日から1月以内となります。

所定の用紙に納税地(住所や事務所)、氏名、事業内容や事業開始年月日等を
記載して提出すれば問題なく手続きできるかと思います。

青色申告承認申請書は青色申告書による申告をしようとする年の3月15日まで
(その年の1月16日以後、新たに事業を開始したり不動産の貸付けをした場合には、
その事業開始等の日(非居住者の場合には事業を国内において開始した日)から2月以内。)
に提出が必要となります。

青色申告の承認を受けますと次のような特典が特典が受けられます。

(1)青色申告特別控除で最大65万円の控除が受けられる。

(2)青色事業専従者給与で配偶者等に対しての給与が経費として認められる。

(3)貸倒引当金によって事業所得の方においては一定額の引当金計上が認められる。

(4)純損失の繰越しと繰戻しで事業所得などに損失(赤字)の金額がある場合で、
損益通算の規定を適用してもなお控除しきれない部分の金額(純損失の金額)が
生じたときには、その損失額を翌年以後3年間にわたって繰り越して、各年分の
所得金額から控除をすることができます。

こちらの特典を受けるためには、原則的には正規の簿記によって経理する必要がありますが、
経売上や仕入、経費に関する帳簿などを適正に作成し、一定期間保管すれば要件を満たします。

特典のうち青色申告特別控除はメリットが大きく、所得(利益)から最大55万円を控除すること
ができます。個人事業を行っている方のほとんどが青色申告をしているかと思いますので、
開業届出書とセットで提出するようにしてください。

下の3つは給与の支払いを最初からされる方が対象となります。

給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書は開設届として、事業の開始等の事実があった日から1月以内に提出する必要があります。この届出を行いますと、従業員の給与の管理者となるため、正社員やパートして働いた方であれば、覚えがあるかと思いますが、給与から源泉徴収されたり、年末調整のための書類の提出といった手続きを逆に事業主として対応する必要があります。

具体的には源泉所得税の納付(毎月または年2回)や年末年始に年末調整を行い、源泉徴収票の発行や法定調書合計表の提出といった事務作業が必要になってきます。

また雇用する従業員が配偶者であったり親族である場合には、青色事業専従者給与に関する届出手続を提出する必要があります。この書類は青色事業専従者給与額を必要経費に算入しようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後に開業した人や新たに専従者がいることとなった人は、その開業の日や専従者がいることとなった日から2月以内)に提出する必要があります。

こちらの書類には給与を支給する専従者の氏名、続柄、年齢、業務内容、支給額などを記載する必要があります。

この規定も青色申告承認申請の特典のひとつであるため、親族を専従者にしようとされる方は、必ず青色申告を選択してください。またこの制度は給与を支給する親族を専従者(その事業に専任して従事している者)と規定しているため、会社勤めの親族などには適用できませんのでご注意ください。

また専従者となるためには、事業者と生計を一にする配偶者その他の親族であり、かつその年の12月31日現在で年齢が15歳以上であることが条件とされ、支給額についても労務の対価として相当であると認められる金額までと規定されているため、支給額の設定にも注意が必要となります。

最後に給与の支給を行った場合には、源泉徴収を行う必要が生じます。

原則的には給与を支払った月の翌月10日までに徴収した源泉所得税を納付する必要がありますが、給与の支給人数が10人未満であれば、毎月の納税を半年に1度にすることができます。
この申請を行うのが、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請となります。

こちらは重要度は低いですが、納付書の作成と納付の手間を考えると手続きされた方がよいかと思います。

2.健康保険、国民年金への切り替え

会社員として働かれていた方は社会保険に加入されていたため、退職して個人事業に
なった場合には、国民健康保険と国民年金の加入手続きが必要となります。

この手続きはお住いの市区町村にて【身分証明書】【会社から交付される資格喪失証明書】
【年金手帳】を持参して所定の書類に必要事項を記載しますと手続きできます。

3.運転資金の準備

開業当初から取引先があり、収入が確保できている事業者であれば必要ないかもしれませんが、
一からお店や事業を始める場合には、運転資金の確保も重要になります。

資金調達を検討されているのであれば、日本政策金融公庫で融資を受けるのが最善と考えます。
日本政策金融公庫は株式の100%を国が保有することを法律によって定められています。

起業前や起業間もない事業者に対しては、新規開業資金や新創業融資制度といった制度融資を
受けることが可能です。このような融資は前述のとおり起業前や起業間もない期間にしか
融資を受けることができないため、開業後の資金に不安のある方は早めに事業計画の検討を
行い、融資の申し込みされることをおすすめします。

4.事業用の銀行口座、クレジットカードの作成

事業を行いますと、年に1度かならず確定申告を行うことになります。確定申告を行うには
決算書の作成が必要になりますが、決算書を作成するうえで個人的に思うことは、
まずは個人的なお金と事業のためのお金を明確に区別する必要があるかと思います。

そのために今まで使用していた銀行口座やクレジットカードとは別の銀行口座やクレジットカード
をご用意することをおすすめします。これを明確に区分しますと収支の集計や会計入力も
簡素化できますし、事業用の口座を持つことで預金が増えていれば儲けている、減っていれば
まだ将来への投資の状況と会計に詳しくなくとも預金の増減で事業の現在地が見えてきます。

銀行口座については個人名義の口座と事業口座の選択ができます。事業口座のメリットは
口座作成に一定の審査があるため、外部的な信用が高いという点が挙げられますが、
一方で個人名義で契約している電話やクレジットカードとの連携ができないケースもあるため、
どちらが良いかは事前に検討されたほうがよいかと思います。

5.雇用保険、労働保険への加入

開業当初から従業員がいる場合には共に働く大切なパートナーのために、雇用保険と
労働保険は必ず加入しましょう。まずは適用事業所になるところからですが、加入する条件は
従業員の労働条件が、1週間の所定労働時間が20時間以上であり、かつ31日以上の雇用見込みがあることとなります。この条件を満たしている場合には、加入義務がありますので、もれなくお手続するようにしてください。

また雇用している人数が5名以上雇用しており、かつその事業が法定16業種に該当する場合には、社会保険の加入義務も生じますので、ご注意ください。

6.会計処理や領収書の整理

日常は店舗の運営や取引先との打ち合わせ、商品等の製造をいった本業に使う時間が
多くあるかと思います。私も会社員のときには経理的な作業は後回しで、休日出勤して
経費精算書類を作成していた過去もあります。そのため知識や経験がない方はこういった
帳簿の作成は非常に煩雑な作業に感じるのではないかと思います。

いままでの内容は、ほかのサイトでも内容的に重複しているかと思いますが、経理回りに
ついては今までの経験からこのようにした方が、スムーズに経理ができるポイントを
お伝えしたいと思います。

・現金をなるべき使わない

現金を使うと紙の領収書が増えて、またこの記録は銀行口座やクレジットカードの
明細に取引の金額が記録されないため、なるべく現金を使わず、なるべくカードで
決済を行い、利用明細に出金の内容を記録したうえで明細をまとめて保存すると
手間が減るかと思います。

・事業者向けの通販を利用する

細かい備品の購入にあたっては、割高かもしれませんが、カウ〇ットやア〇クルと
いった事業者向けの通販を利用するのも一つの手です。

購入した商品の明細を作ってくれますし、支払も口座振替のため、支払の手間も
ありません。その都度現金で領収書をもらい、会計帳簿に記帳する手間もなくなるので、
塵も積もれば山となるという観点からこういった業者の利用もありかと思います。

・銀行口座とクレジットカードを事業用とプライベートに分ける

前述のとおり1つの通帳を使用していると取引件数は多いものの、半分は個人利用であれば、
これを会計上に反映する必要がなく、無駄な作業になったり、どちらで利用したか思い出す
のに時間がかかったりするケースがありますので、きっちりと分けて、一目で売上や経費、
どのような用途の使用かが明確になるようにまとめておくことをおすすめします。

・自身への生活費のために引き出す金額と月日を決めておく。

銀行口座を分けますと、個人利用の口座にはお金が入ってきませんので、事業口座から
資金移動することになります。個人事業には給料という概念がないため、自分への給与と考えて
個人口座への資金移動の金額と月日を決めておきますと、事業の状況の把握がしやすくなります。

開業当初で事業のやりくりが大変な時期でも、個人的な生活費が変わることは基本的に
ないでしょうから、個人と事業でお財布を分けるという意味でこの方法もご検討頂ければと思います。

・忙しくても予定を決めて作業を先送りしない

前述の内容はテクニック的な内容でしたが、最後は作業を溜め込まないことに尽きるかと思います。
当たり前のことですが、1年前にやったことや使った経費はわすれていることが多いです。

ですので、なるべく入出金をまとめた上で、こまめに処理を行なう事を心がけてください。

幣事務所の料金体系も会計入力については50行でいくらと価格の設定させて頂いております。

これは単純な作業に対する報酬のため、取引件数がすくなければ、価格を抑えることも可能ですし、このような料金体系の会計事務所も多いのではと思います。

入手金をまとめたり、理解することは作業量を減らすだけでなく、事業主ご本人も数値への
理解が深まるため、経営にも好影響を及ぼすのではないかと思っております。

他にも細かい部分でお伝えしたいことや記載してしない事項も多いのですが、参考になりましたら幸いです。

またこちらのブログでは皆様のお役に立つような情報を発信できればと考えております。

※当サイトの情報によって損害が発生したとしても、当事務所は一切の責任を負いませんので、その旨ご了承下さい。

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