法人を開業した時の手続について
中央区日本橋兜町にあるフラウズ会計事務所・税理士の平林慎(ひらばやしまこと)です。
前回は法人成りのメリットについて書いてみましたが、今回は法人成りしたときに必要な手続きや
やるべき事をお伝えできればと思います。
私も税理士事務所と併設して合同会社を立ち上げておりますので、いままで関与した経験と併せて
自身が法人を設立した際に感じたことも踏まえてお伝えできればと思います。
1.新規に法人を設立した場合
法務局での法人の設立登記が完了しましたら、まずは公官庁への諸手続きということになりますが、
手続の目的及び提出先、提出書類は次の一覧のとおりとなります。
・税務署への手続きについて
税務署への手続は複数種類がありますが、法人設立届出書のほか、青色申告承認申請書は欠損金の
繰越等の特典もあるため、必ず提出しましょう。
給与支払事務所等の開設届出書は給与の支給をしない場合には不要なのですが、給与は支給する事
になるかと思いますので、併せて提出することになります。
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請については、給与支給日の翌月10日までに源泉所得税
を毎月納付するのが原則なのですが、給与受給者が10人未満の場合には、半年に1度納税すれば良い
ことになります。納付書の作成も手間になるかと思いますので、併せて提出することをお勧めします。
下の2つ『適格請求書発行事業者の登録申請書』『消費税課税事業者選択届出書』は消費税関係の手
続きになります。(今回のケースは設立時の資本金が1,000万円以下としてお伝えしておりますので、
その旨ご了承下さい。)
まずは『消費税課税事業者選択届出書』については、設立時から消費税の課税事業者になりたい場合
に提出する事になります。設立当初から課税事業者になりたいケースは、先行して多額の設備投資等
を行うため、その設備投資をした年度に消費税の還付を受けたい場合や、輸出取引が多い業種である
ケースが該当するかと思いますが、こういった場合には提出することになりますので、設立された法
人の業種、業態を検討して提出するようにしてください。
一方『適格請求書発行事業者の登録申請書』については、令和5年10月から始まるインボイス制度に
関しての書類となります。設立当初から令和5年9月までは消費税の免税事業者でよくても、販売先と
の兼ね合いで消費税課税事業者(適格事業者)になる必要がある場合には、事前に提出する必要があ
ります。(但し令和5年3月31日までに提出すればよいので、現段階では設立時に提出する必要はない
のですが、今後は設立時に検討が必要になるかと思いますので、今から記載しております)
・都道府県税事務所、市区町村への手続きについて
都道府県税事務所、市区町村への提出書類は法人設立届出書の1種類のみとなります。
提出書類は各都道府県税事務所、市区町村で異なるようですが、必要事項がわかれば問題ないような
ので、入手した書類に該当の書類がありましたら、それをお使いになられて問題ありません。
・年金事務所への手続きについて
年金事務所については、社会保険の加入のため手続きとなりますが、被保険者が1人でもいる場合には
加入することになりますので、税務署の手続きと併せて行うことになるかと思います。
手続きとしましては、まずは社会保険に加入している事業所になるため、「社会保険適用届」を提出、
その上で被保険者となる人を届出する「被保険者資格取得届」を提出することになりますが、開業と
同時に社長が加入する場合には、社会保険料の計算の基礎となる役員報酬について、「役員報酬決定
同意書」を提出する必要がありますので、ご注意ください。
社会保険の加入については、条件として被保険者となるべき者が1人以上いることが条件となりますの
で、例えば1人社長の会社で給与の支給がない場合には、加入できない(手続不要)という事になります。
・労働基準監督署、公共職業安定所への手続きについて
こちらは労働保険(雇用保険と労災保険)の手続きとなりますので、そもそも1人社長の場合には手続
不要となりますが、加入と同時に従業員の雇用がある場合には、手続きは必要となります。
労働保険(雇用保険と労災保険)の手続きは少し面倒で、1ヶ所で手続きが完了せず、加入時に保険料
の納付が必要となります。
まずは労働基準監督署にて保険関係成立届を提出。これと同時に概算保険料申告書も併せて提出(保険
料の納付)します。ちなみにこの保険料は1年分の前払となっており、該当する従業員への給与支給見込
額に料率を乗じて納付することになります。
この手続きで労災保険の手続きが完了し、次は雇用保険の加入手続きとなります。
雇用保険の加入手続は公共職業安定所(ハローワーク)での手続となり、労働基準監督署で手続きした
2種類の書類の控えと雇用保険適用事業所設置届、併せて履歴事項全部証明書等を併せて提出する事で
雇用保険の適用事業所になった上で、従業員ごとに作成する雇用保険被保険者資格取得届を提出して、
従業員を雇用保険の被保険者とします。
・金融機関への手続きについて
こちらは公官庁への手続きではありませんが、社会保険の口座振替や税金のダイレクト納付や、取引先
との決済に法人名義の銀行口座は必須かと思われますので、法人口座の開設もお早めに手続きされるこ
とをおすすめします。近年ではWEB会議システムも発達しておりますので、店舗に行くことなく法人
口座の開設をできる銀行も増えているようです。
開設に必要な書類の書式は銀行によって異なりますが、多くの金融機関で履歴事項全部証明書、印鑑証
明、税務署へ提出した法人設立届出書の控えは請求されるかと思いますので、設立時に併せて準備して
おくようにして下さい。
私も開業時に法人を設立して、法人口座を開設しましたが、一部の必要書類は郵送しましたが、面談は
WEB会議のみで速やかに口座開設できましたので、面倒がらずにお早めに口座開設をお願い致します。
・日本政策金融公庫での手続きについて
また新規で法人を設立した場合には、運転資金の準備も必要なケースが多いかと思います。
以前のブログ「ごあいさつと個人事業開業時の手続について」でも書きましたが、法人設立時も同様に、
新規開業資金や新創業融資制度といった制度融資を受けることが可能です。この融資は起業前や起業間
もない期間にしか融資を受けることができないため、開業後の資金に不安のある方は早めに事業計画の
検討を行い、融資の申し込みされることをおすすめします。
2.個人事業から法人なりした場合
個人事業から法人成りした場合には、提出書類は次の一覧のとおりとなります。
・税務署への手続きについて
税務署への手続は1.新規に法人を設立した場合と同じ書類を提出した上で、個人事業が廃業となるため、併せて「個人事業の廃業届出」「所得税の青色申告取りやめ手続」「給与支払事務所等の廃止届出」を提出する必要があります。
個人事業の廃業届出には、廃止の理由を記載する箇所がありますので、こちらに法人の開設として記入をして提出することになります。
また個人事業の段階で消費税の納税義務があった方は、法人成りすることで要件を満たしている場合には、免税事業者ということになります。この場合にも1.新規に法人を設立した場合に記載した消費税の検討が必要になりますので、併せて確認するようにしてください。
・都道府県税事務所、市区町村への手続きについて
都道府県税事務所、市区町村への届出は1.新規に法人を設立した場合と同じ書類になります。
個人事業の場合は開業時に都道府県および市区町村への届出は行っていませんので、廃業手続等はありませんから、設立届だけを提出すれば問題ありません。
・年金事務所への手続きについて
年金事務所については、個人事業の場合は5人以上の雇用がなければ、加入義務がありませんので、法人
成りと同じタイミングで加入される方も多いかと思いますので、その場合には1.新規に法人を設立した場合と同様の手続きとなります。
対して個人事業の時から加入されている場合には、「適用事業所名称/所在地変更届」を提出することに
なります。個人から法人に変更しているため、履歴事項全部証明書を併せて提出することで手続を行う
ことができます。
・労働基準監督署、公共職業安定所への手続きについて
労働基準監督署、公共職業安定所についても、社長1人で設立開業する場合には加入不要ですが、法人成りと同じタイミングで加入される場合には1.新規に法人を設立した場合と同様の手続きとなります。
対して個人事業の時から加入されている場合には、「労働保険名称・所在地等変更届」「雇用保険事業主事務所各種変更届」を提出することになります。こちらも履歴事項全部証明書を併せて提出することで手続を行うことができます。
・中小企業基盤整備機構への手続きについて
個人事業の段階で経営セーフティ共済に加入されている事業者の方は、共済の名義変更を行う必要があります。こちらの手続きも「契約承継申出書」「重要事項確認書 兼 反社会的勢力の排除に関する同意書」「掛金預金口座振替申出書」と併せて法人、個人の印鑑登録証明書と履歴事項全部証明書を提出することで手続きができますので、加入されている方は併せて手続きするようにしてください。
・金融機関での手続きについて
個人事業から法人成りした場合でも、法人口座の開設は必要になりますので、1.新規に法人を設立した場と同様に法人口座の開設をしていただくのと同時に、すでに取引銀行があり、融資を受けている場合には、名義の変更や個人から法人への借り換え等の手続きが必要になりますので、もれなく手続きをするようにしてください。
また法人成りと同時に融資を受けることを検討している場合には、日本政策金融公庫や市区町村の制度融資の相談、面談も併せて進めるようにしてください。
3.まとめ
法人の設立については、新規開業と個人事業からの法人成りでは、手続きが異なりますので、注意して手続きを進めて頂ければと思います。その他にも契約関係の名義の変更や取引先への案内等といった手続きも大事になりますので、これらの手続きは速やかに行うよう心掛けて頂けると良いかと思います。
またこちらのブログでは皆様のお役に立つような情報を発信できればと考えております。
※当サイトの情報によって損害が発生したとしても、当事務所は一切の責任を負いませんので、その旨
ご了承下さい。
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